2014年 02月 27日
2月の読書録 高熱隧道・百年の手紙・日本の血脈ほか |
今月は、ブログの読書友達であるVINさん推薦の本3冊を図書館のリクエストで借りて読むことができた。当市の図書館になかったので、県内の図書館から借りたものであり、ビニールのカバー付きで、大切に扱い下さいと書かれている。
『高熱隧道』『日本の血脈』『百年の手紙』の3冊である。どれも心に残る良い本でした。
高熱隧道 吉村昭 文春文庫
立山の黒四ダムのことは、有名だが、これは黒部第三ダムを造るための資材、工具などを運ぶための隧道をつくる工事の話である。昭和11年から15年にかけて軍需用に電力を必要とした。峻厳な地形に隧道をつくることは、学者でも予測不能な難工事であった。いくつかの土木会社が請け負ったが、あまりの難工事に撤退する組もあった。工区を3区に分け中間を受けた。工事に直接係るのは人夫達と技術者達だった。技術者の藤井の目で書かれているが、上司に当たる現場総監督であり、事務所長の根津の指令下にあり、鍛えられていく。
技術者と人夫、両者の信頼がなければ工事はうまく進まない。トンネル崩落、ダイナマイトの爆発、などで大勢の死者が出る。バラバラになった遺体を粗末に扱ったら、逃げ腰の人夫の心はつかめない。身内の遺体を扱うようにバラバラになった部分を繋ぎ合わせていく。
掘り進んでいくうちに、岩盤の温度が65度の所に行き当たる。ダイナマイトは40度で自然発火すると言われている。最後には160度を観測する。身体と岩盤に水を直接かけ、風を送ってもらいながらも短時間交代でしか作業できない。それでも、賃金の高さに逃げ出せない。自分たちが体が代償だと諦めている。また、コンクリートの宿舎が一夜のうちに消えてしまったこともあった。泡雪崩という現象だった。この時も70名の死者がでた。
何度も、工事中止の命令が出たが、天皇の激励のお言葉と見舞金から、工事は再開された。
それでも、隧道は貫通した。
国家権力とトンネル屋と言われる、何としても貫通させるという根津たちの情熱が成し遂げたともいえる。吉村昭氏は、綿密な取材を繰り返しこの素晴らしい作品を書き上げた。
VINさんのブログに詳しいのでお読みください。
http://yaplog.jp/ashy_ashy/archive/824
日本の血脈 石井妙子
女系家族―小泉進次郎
癒されぬ子ども―香川照之
哀しき父への鎮魂歌―中島みゆき
土地の亡者と五人の女―堤康次郎
ひとりぼっちの豪邸―小沢一郎
影を背負って―谷垣禎一
流血が産んだアート―オノ・ヨーコ
遅れてきた指揮者―小澤征爾
皇室で掴んだ幸せ―秋篠宮紀子妃
母が授けた改革精神―美智子皇后
上記がこの本で取り上げられている目次である。一見、興味本位の扱いのように思えるが、読んでみるとなるほどと納得する。系図とか血脈とかみな好きで関心が強い。
NHKでルーツを探す番組があったが、調べてもらった人たちはみなさん涙を浮かべていた。裸にされて嫌な人もいると思うが、温かいまなざしで書かれている。
百年の手紙 梯 久美子
この本を読んでいくうちに、惹きつけられ一気に読み進んだ。と言っても一晩では読めなかったが、それは腹ばいで読む姿勢が、肩痛によくないと分かったからである。
著者も言われるように、手紙は、その歴史や時代を色濃く映し出している。まさに歴史の証言である。この本を買って手元に置きたいと思った。胸を打ち目頭が熱くなる手紙が多かった。特に、昭和天皇が終戦直後に、皇太子(現天皇)に宛てた手紙は強く印象に残った。
個々の手紙は略し、著者のあとがきを勝手に抜粋させていただく。
《手紙は個人の心情を綴るものでありながら、書かれた時代を鏡のように映し出す。最もプライベートな文章が、激動の時代にあっては、貴重な歴史の証言になるのである。
本書では、20世紀の百年間に日本人が書いた手紙を百通あまり取り上げた。
最 初に紹介した、田中正造が明治天皇に宛てた直訴状は、20世紀最初の年の1901年に書かれたものである。この年、福沢諭吉が没し、当時は皇太子だった大正天皇の第一皇子として、裕仁親王が誕生した。のちの昭和天皇である。以後の百年間は、近代国家として歩み出した日本が、日露戦争、日中戦争、太平洋戦争をへて高度成長を果たし、さらにバブル経済とその崩壊を経験しただった。
http://yaplog.jp/ashy_ashy/archive/842
たらちね 井伏鱒二
エッセイ。友人たちの母親との情景など描く表題作。その他、友人、幼馴染との思い出、など読みやすくユーモアのある文章で楽しく読んだが、本を返却してしまった後は、内容も思い出せない。特に最近は忘れる時間が早い。
魂の自由人 曽野綾子
途中まで読んだが、返却日が来たので返してしまった。なんとなく読み進める気が起きなかった。
父の晩年 山口瞳
未読だが手元にありこれから読むつもりである。
『高熱隧道』『日本の血脈』『百年の手紙』の3冊である。どれも心に残る良い本でした。
高熱隧道 吉村昭 文春文庫
立山の黒四ダムのことは、有名だが、これは黒部第三ダムを造るための資材、工具などを運ぶための隧道をつくる工事の話である。昭和11年から15年にかけて軍需用に電力を必要とした。峻厳な地形に隧道をつくることは、学者でも予測不能な難工事であった。いくつかの土木会社が請け負ったが、あまりの難工事に撤退する組もあった。工区を3区に分け中間を受けた。工事に直接係るのは人夫達と技術者達だった。技術者の藤井の目で書かれているが、上司に当たる現場総監督であり、事務所長の根津の指令下にあり、鍛えられていく。
技術者と人夫、両者の信頼がなければ工事はうまく進まない。トンネル崩落、ダイナマイトの爆発、などで大勢の死者が出る。バラバラになった遺体を粗末に扱ったら、逃げ腰の人夫の心はつかめない。身内の遺体を扱うようにバラバラになった部分を繋ぎ合わせていく。
掘り進んでいくうちに、岩盤の温度が65度の所に行き当たる。ダイナマイトは40度で自然発火すると言われている。最後には160度を観測する。身体と岩盤に水を直接かけ、風を送ってもらいながらも短時間交代でしか作業できない。それでも、賃金の高さに逃げ出せない。自分たちが体が代償だと諦めている。また、コンクリートの宿舎が一夜のうちに消えてしまったこともあった。泡雪崩という現象だった。この時も70名の死者がでた。
何度も、工事中止の命令が出たが、天皇の激励のお言葉と見舞金から、工事は再開された。
それでも、隧道は貫通した。
国家権力とトンネル屋と言われる、何としても貫通させるという根津たちの情熱が成し遂げたともいえる。吉村昭氏は、綿密な取材を繰り返しこの素晴らしい作品を書き上げた。
VINさんのブログに詳しいのでお読みください。
http://yaplog.jp/ashy_ashy/archive/824
日本の血脈 石井妙子
女系家族―小泉進次郎
癒されぬ子ども―香川照之
哀しき父への鎮魂歌―中島みゆき
土地の亡者と五人の女―堤康次郎
ひとりぼっちの豪邸―小沢一郎
影を背負って―谷垣禎一
流血が産んだアート―オノ・ヨーコ
遅れてきた指揮者―小澤征爾
皇室で掴んだ幸せ―秋篠宮紀子妃
母が授けた改革精神―美智子皇后
上記がこの本で取り上げられている目次である。一見、興味本位の扱いのように思えるが、読んでみるとなるほどと納得する。系図とか血脈とかみな好きで関心が強い。
NHKでルーツを探す番組があったが、調べてもらった人たちはみなさん涙を浮かべていた。裸にされて嫌な人もいると思うが、温かいまなざしで書かれている。
百年の手紙 梯 久美子
この本を読んでいくうちに、惹きつけられ一気に読み進んだ。と言っても一晩では読めなかったが、それは腹ばいで読む姿勢が、肩痛によくないと分かったからである。
著者も言われるように、手紙は、その歴史や時代を色濃く映し出している。まさに歴史の証言である。この本を買って手元に置きたいと思った。胸を打ち目頭が熱くなる手紙が多かった。特に、昭和天皇が終戦直後に、皇太子(現天皇)に宛てた手紙は強く印象に残った。
個々の手紙は略し、著者のあとがきを勝手に抜粋させていただく。
《手紙は個人の心情を綴るものでありながら、書かれた時代を鏡のように映し出す。最もプライベートな文章が、激動の時代にあっては、貴重な歴史の証言になるのである。
本書では、20世紀の百年間に日本人が書いた手紙を百通あまり取り上げた。
最 初に紹介した、田中正造が明治天皇に宛てた直訴状は、20世紀最初の年の1901年に書かれたものである。この年、福沢諭吉が没し、当時は皇太子だった大正天皇の第一皇子として、裕仁親王が誕生した。のちの昭和天皇である。以後の百年間は、近代国家として歩み出した日本が、日露戦争、日中戦争、太平洋戦争をへて高度成長を果たし、さらにバブル経済とその崩壊を経験しただった。
21世紀を迎えて十数年が経つが、これからの日本を考えるとき、百年の来し方を振り返り、歴史の節目を生きた日本人の肉声に耳を傾けることは、それなりに有益なことであるように思う。大きな震災と、原子力発電所の事故という経験をした現在の日本人は、まさに歴史の転換点に立っているからである。》(本書「あとがき」より)
もう一つ勝手にVINさんのブログを紹介します。http://yaplog.jp/ashy_ashy/archive/842
たらちね 井伏鱒二
エッセイ。友人たちの母親との情景など描く表題作。その他、友人、幼馴染との思い出、など読みやすくユーモアのある文章で楽しく読んだが、本を返却してしまった後は、内容も思い出せない。特に最近は忘れる時間が早い。
魂の自由人 曽野綾子
途中まで読んだが、返却日が来たので返してしまった。なんとなく読み進める気が起きなかった。
父の晩年 山口瞳
未読だが手元にありこれから読むつもりである。
| |
by ttfuji
| 2014-02-27 15:43
| 読書