私の生活や自分史・読書、旅などの記録


by ttfuji(トコ)

読書録 5册 山月記 中島敦 他

 借りた本を含め、積ん読本は多いのだが、読むそばから内容を忘れる。
読んだ本の記録と内容を忘れないために簡単なあらすじや感想を書いておこうと始めた読書録だが、なかなかブログに公開するまで読み込まないうちに期日が来て、図書館に返却してしまう。自分で買った本なら、確認できるが、すぐ書かないと記憶もどんどん薄れるので自信がない。年をとるとはこういうことかと愕然とする。散々言い訳した上で、読んだ本の紹介します。
 憑神  浅田次郎
 図書館でリクエストして借りた本。氏独自な非現実な世界の話である。時代は幕末。文武に秀でたと評判の別所彦四郎は、貧乏武家の次男故に婿入りする。城中に出仕し、仕事もきちんと勤め、妻八重とも仲睦まじく暮らしていたが、長男が生まれると、途端に婿いびりが始まり、謀略で縁を切られる。実家をつぐ兄は凡庸で気弱だが、そこの居候になる。鬱々とした日々の中で、屋台の老人に出世払いで飲ませてもらい、気の強い嫂に姑である母親までが気を使う生活。ある時、土手で転んでふと見ると古い祠がある。それに手を合わせたのが運の尽き、それは貧乏神だった。貧乏神は、お大尽に姿を変え、近づいてくる。いろいろあるうちに、対象を宿替えすることもできると聞き、義父に宿替えしてもらう。途端に義父宅は火事で全焼。それに痛く反省する彦四郎だが後の祭り。貧乏神のあとは、疫病神、最後に死に神がつく。三廻り稲荷という神様は3回やってくる。
 友人に榎本釜次郎(武揚)が出てきたり・・徳川慶喜公の影武者になったり、と面白く展開するが、作者は、彦四郎に本当の武士道を見せたかったのだろう。
 惑い  津村節子
 短編集。雑誌に連載されたものらしい。「惑い」に共通項のあるものを集めたという。主題は、夫の甥が、大学進学のために上京。夫は、同居させたいが、妻は今の平穏な生活を壊されたくないと、強行に反対。下宿を探すまでと、来宅した青年のさわやかさに驚く。下宿先で病気になった夫の甥を看病するうちに、ふと惑いの気持が・・
 吉村昭の奥さんなので、吉村の一面など、モデルになっていないかと期待したが、エッセーではないので期待はずれだった。
 家族趣味  乃南アサ 
 芥川賞作家ということで、始めて読んでみた。ちょっとこわい小説。ミステリー作家だったと気がつく。
 表題作「家族趣味」 5編が収録されている。
 <人生は楽しく、充実していなければ。そこそこ出世した旦那に、健康な息子。私の仕事も順調だ。>
 自分の趣味通りの家庭を作ろうと、大卒と同時に、結婚、出産、仕事と順調にやってきて、夫や中学1年の息子にも理解させ、友人家族のようにニックネームで呼びあい、自由で束縛なく、それぞれ外食、と理想の家族作りに成功したと、思っていたが・・
 「魅惑の輝き」
 宝石に取り憑かれる若い女性。宝石を見てしまうと、それを手に入れるまでは、身体が変調を来すほど何も考えられなくなる。レストランで、夜遅くまで働いたり、時給を上げてもらったりしても、身なりは貧しく、おしゃれもせず、すべて宝石につぎ込み、サラ金にまで手を出して破滅していく。
ミステリー作家らしく最後は恐ろしい結末が。
 山月記  中島敦 
 作品名も作者名も、かなり以前から知っており、読みたいと思っていた作品。友人から、高校の国語の教科書に載ってなかった?、と言われたことがあるが私の教科書にはなかった。
 中島敦は、1909~1942 までの33歳の短い生涯を閉じた。この短い期間に、いくつものすぐれた作品を残した。
 なぜこのような作品が書けたのか。彼の家は江戸時代からの儒家であり祖父は漢学者である。父も高校の漢文の先生だ。幼いうちから土壌があり素養は養われたであろう。彼は、一高、帝大を出て女学校の英語の教師になる。喘息の持病があり、健康ではなかった。作品は教師時代に書きため文学界などに「山月記」「文字禍」が掲載されたという。
 「光と風と夢」で芥川賞候補になるが、受賞には到らなかった。大変な落胆ぶりで、原稿などを燃やしたと解説に書かれている。
 文庫本の「山月記」には他に名人伝、弟子、李陵、牛人、盈虚など、中国の歴史や古典に出てくるような作品の他、南国パラオに南洋庁の国語教科書編集書記として赴任(転地療養をかねて)したときの作品も掲載されている。
 一口で感想などとても書けないが、独特の魅力があり、面白く、難解、博学で才能豊か、独特な文体、時に禅問答のようで理解不能。
一番興味深かったのは、「李陵」。著者の絶筆となった作品である。
 李陵は国境の兇奴?(キョウド)征伐を命じられた不遇な将軍であり、兵力からいっても勝ち目のない闘いを良く持ちこたえ、それでも援軍がなく、倒れたところを敵に助けられた。敵側についたわけではなかったが丁重に扱われ尊敬された、敵に下ったことで、君主の怒りを買い、司馬遷がかって彼を賞賛したということで、足を切られたりもっと酷い宦官と同じ体罰を受け長く牢に繋がれる。君主が代わり、李は故国に帰るのを許され迎えが来るが断り、胡で生涯を閉じる。
 
 中島敦は、結局、喘息で体力も消耗しつくし、命を閉じる。
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Commented by i&i at 2007-08-03 16:04 x
憑神の映画は妻夫木君を見たくて海老名まで行きました。本は図書館にありますか。
新潮文庫540円と出ているから買ってもいいかな。
Commented by すみれさん at 2007-08-03 19:09 x
憑神  浅田次郎
この作品は未読でした。なんとなく怖いような気もしますが、探してみます。確か身近な図書室には無かったような。リクエストしてみます。
Commented by ttfuji at 2007-08-03 21:42
i&iさん
図書館でリクエストして借りましたが、3か月くらい待ちました。いつも3冊くらいリクエストしているので、待ちぼうけという感じはありません。それから、Tさんに貸している本の件、あなたからの話と言うことでなく、私が又貸ししたものとして、私が思い出したように聞いてみます。言わないで、と言って下さってますが、忘れていると思いますので、伝えたほうがいいと思います。催促されて気を悪くする人ではありませんから。放っておいてごめんなさい。
Commented by VIN at 2007-08-03 21:45 x
「憑神」コミカルな浅田ワールド全開という感じでおもしろかったです。
映画は観ていませんが、おもしろそうですね。
中島敦は「日本百名山」の深田久弥と親しく、「李陵」は深田氏が名づけたと読んだことがあります。
「山月記」、トコさんの感想を見てまた読んでみたくなりました。
Commented by ttfuji at 2007-08-03 21:47
すみれさん
怖い話ではありません。大人のおとぎ話です。結構ファンタジーだの、怪奇小説だの、空想痛快小説など、気楽に読めて楽しいですよ。
Commented by ttfuji at 2007-08-03 21:57
VINさん
「李陵」は絶筆で、原稿は書き込みが欄外や裏まですごかったそうです。清書する力もなく、力尽き奥さんから渡されたのを深田久弥が、出版社に届け、印刷工(筆校)が正しく判読できたか、後々まで心配したそうです。原稿は失われ確認もできないと悩んだそうです。
by ttfuji | 2007-08-02 10:34 | 読書・読書会・図書館 | Comments(6)