私の生活や自分史・読書、旅などの記録


by ttfuji(トコ)

読書 破船

 吉村昭の「破船」を読んだ。何とも衝撃的な小説だった。この題名を見たとき、漂流船のことかと思った。今まで「島抜け」とか「アメリカ彦蔵」とか船に関係するものを読んでいるので、船に乗る人たちから見た「破船」かと思っていたがそうではなかった。寒村の貧しい漁村に生きる人々から見た破船である。
 村には長がいて、古くからのしきたりによって村人をまとめている。人々の暮らしの支えは、季節毎に浜で捕れるイワシ、さんま、イカ、たこなどである。それを干したり塩漬けにしたりして山を越えて3日もかかる隣町に雑穀類や雑貨などと交換しに行く。
 とても一家の飢えを凌げるほどのものは手に入らない。口入れ屋に頼んで年季奉公にでる。どこの家でも、娘が売られるだけでなく、一家の主も、母親も15歳になった子どもも年季奉公に出る。年季は5年だったり10年だったりし、前金を受け取る。その金で一緒に送って行った家族は、食料など持ち帰る。食べるものは雑穀の粥である。

 そんな村に、唯一の恵みは、荒れた海から流れ寄って座礁した船からの収奪品である。米を積んだ回船船だったら2年は食べていける。そういう船には米以外の様々な食品、酒、鍋釜、食器類、寝具や衣類などが豊かにあり、木材もすべて役に立つ。細かいものは薪になる。村では、冬になり嵐が来ると、浜で塩作りの火を焚いて「お船様」を呼び寄せ座礁させる行事が行われる。「お船様」は2年続けてやってきたが、2年目に来たのは大きな災厄をもたらす船だった。

 この小説の主人公は、9歳の伊作である。父親は、体格の良い働き者だったため、3年の年季で率の良い身売りをした。伊作は母と弟妹を支えるべく頑張る。父親は3年の年季が明けて帰ってくるが村に襲った災厄のため家族は伊作だけになっていた。父親に合わせる顔がないと、少年は船を沖に向かって漕ぎ出す・・・
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Commented by すみれさん at 2007-11-27 09:03 x
寒村での生活。それが当たり前だったような時代がありました。

私の周りの一部の人たちを見ていて、「甘えるな!」という言葉が浮かんでくるのも、小説だけの知識ではなく、現実にも厳しい中を生き抜いてきた人たちを、少しでも知るが故でしょうか。
Commented by ttfuji at 2007-11-27 18:15
すみれさん
そうですね。昔は生きるだけでも大変な時代でした。
生き抜くためには何でもしたのでしょうね。今の甘い人間にそういう時代があったことを知ってほしいと思います。
Commented by VIN at 2007-11-28 10:22 x
「破船」に衝撃を受けたひとりです。
機会あるごとに何度か再読しています。
生まれながらにして厳しい環境に順応するようにまるで修行僧のような感覚で日々を過ごす人々に言葉もありません。
これでもかという厳しい運命の波にも耐えるという姿にひ弱な精神の私を見せつけられます。
Commented by ttfuji at 2007-11-28 11:37
VINさん
この本もVINさんがアップされた本です。紹介文を読んだのですが、内容は忘れていました。今回、もう一度読もうとも思いましたが、VINさんのを読むと、あまりに完璧で尻込みしてしまいますので、あえて再読せず、私の感じたことや筋書きだけにしました。これでは書き足りないと言う気がします。例えば、長(オサ)の人格、威厳、補佐する人の責任感、母親の厳しさと愛情、伊作の大人への自覚なども感動しました。
この著者は、資料を沢山集めますがこの本にはそういうものの紹介がありません。全くのフィクションとは思いませんがモデルになったいくつかの出来事はあるのでしょうね。
by ttfuji | 2007-11-26 18:07 | 読書・読書会・図書館 | Comments(4)