私の生活や自分史・読書、旅などの記録


by ttfuji(トコ)

今年最後の図書館行き・読書録

 借りた本、全部は読み切れず、1冊継続するつもりだったが、なんとリクエストが入っているとのこと。この本は、図書館のぐっと奥の方から選び出した本で、リクエストが入っているとは思っていなかった。
 お正月を挟んでの貸し出し期間は3週間である。1週間多い。それでも速読できない私は、読み切れないのは承知で6冊借りてきた。返却した本の感想を記録する。

 ひまわりの祝祭  藤原伊織 講談社
 直木賞やいくつかの文学賞をを受賞しているということで、VINさんのアップで読んでみた。主人公である秋山秋二は画家として才能がありしかし才能に限界を感じ、グラフィックデザイナーに転向、そちらでも賞を受け才能を発揮する。高校美術部の後輩の英子と結婚し、良き理解者であったが、7年前その妻が自殺してしまう。しかも彼女は妊娠していた。主人公の子ではない。ボクはという一人称で語られるが、その時から無気力な生活に陥る。あんパンと牛乳、ポッキーと牛乳、というような食生活だ。新聞だけはとっているが社会とは隔絶している。デザイナーとして会社を経営していた頃の預金を取り崩して食べている状態だ。それがある時、もと同僚で同じく独立し会社を経営している村林が500万円を捨てるので手を貸してくれと言って訪ねてくる。ギャンブルの才もあり、逆に掛けて0にする。そのあとは荒唐無稽で、幻の「ひまわりの絵」を巡って、やくざが絡んだり、ハードボイルドの世界が展開する。
 それにしても主人公の秋山なる人物が好きになれない。無気力な秋山が後半、射撃の腕も推理の才能もあり活劇があるのだが、不自然におもえてならない。善人の皮をかぶった悪人達に復讐するのを描いたのか、巨額の価値を持つ「ひまわりの絵」に群がる人を描いたのかもう一つ理解できない。年齢による理解不足のためかもしれない。
 父への恋文  藤原咲子 山と渓谷社 
 新田次郎と藤原てい氏を両親に持つ著者は、「流れる星は生きている」で奇蹟の赤ちゃん、といわれてきた。生まれて10ヵ月で、満州で終戦を迎え、6歳の長兄と2歳の次兄と共に必死の逃避行を果たした経過は本の中に余すところなく描かれている。10ヵ月の咲子はリュックの中に座らされ、リュックの白濁の紐から北極星をいつも見ていた。母乳もミルクもなく、あるのは雑草の煮汁と味噌をとかした上澄みだけだった。不思議なことにこの情景はしっかり記憶に残っている。母は、二人の男の子を生かすためこの子を諦めた方がいいと言われ、心が動く。とても助かる命ではない。咲子はまだ生きている・・、という記述が本の中に2度ある。
 強い母親に守られてとにかく母の実家に帰還できた。そのあと母は長い病の床につく。気象台の仕事で抑留された父も帰ってくる。父は咲子に大きな愛情を注ぐ。栄養失調から言葉も身体の発達も遅い咲子に「チャコはかわいい」「チャコはいい子だ」と言い続け膝の間にいれて語りかけていた。逃避の体験がすっかりトラウマになって、自分はいない方がいい子どもだったのだ、と思いこみ母親に心が開けない。
 父親は、この子は上手に育てなくてはいけない、といつも一緒にいて本を読んでやったり、本を読むようにすすめたり、書いたものを褒めたり文章の指導をしたりした。二人の兄も母も勿論嫌いではなく好きだったが、圧倒的に父親っ子だった。チャコは”新田次郎について”しっかり見て、書くんだよ”、というのが口癖だった。
 しかし、常に頭にあるのは幼児体験。表情は暗い子だった。兄二人は優秀だったが自分はできない子だと劣等感もあった。それでも大学に入り、母のすすめる結婚から逃れるために、比較文化を学びたいと大学院まで進む。母の熱心な勧めで結婚し、違和感のある結婚生活を送りながらも、長男潤一郎が生まれる。
 毎日のように散歩の時寄ってくれた、父の急死。何日か前から咲子は前兆を感じ病院行きをすすめたが、大丈夫、と取り合わなかった。心筋梗塞だった。書きたいことがいっぱいある、と直前まで言っていたという。
 母への詫び状  藤原咲子 山と渓谷社
 「父への恋文」と一緒に借りてきたが、こちらもとても良い本だ。著者は、大学院のあと中国に留学し、今は大学で中国語を教えている。母のことも理解できるようになっている。理解は子どもの頃から分かってはいたのだが、頭と気持が一致しなかった。今でも北極星が見られないという。どこかへ連れ去られるような気になるという。この本では「父への恋文」とダブっている箇所もあるが、自分のことをよく分析して書いている。記憶力と文章力はさすがだ。今、母は86歳(平成17年現在)。著者が生活の面倒を見ているようだ。最後の20ページほどが読み終わっていないが、継続はできなかった。
 「藤沢周平のすべて」 文藝春秋編
 娘、弟、自伝の3冊を読み、しつこいようだが総括的に読むつもりで借りてきたが、さっと目を通しただけで返却した。
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Commented by すみれさん at 2007-12-28 08:12 x
まだあの敗戦の余波が残っているのですね。
悲しいほどの体の中に、心の中に。

今日はテロのニュースが。人間は賢くなれないのでしょうか。
Commented by ttfuji at 2007-12-28 12:56
ブット氏暗殺、また混迷が一段と深まりますね。人間の愚かさは永遠に続くようですね。
幼いときの体験は一生あとを引くのだなと思いました。咲子さんも心の中ではすでに整理されているようですが。
by ttfuji | 2007-12-27 19:21 | 読書・読書会・図書館 | Comments(2)