私の生活や自分史・読書、旅などの記録


by ttfuji(トコ)

読書 太郎が恋をする頃までには・・

 最近読んで、切なさと怒りで涙した本である。Tさんが、図書館にリクエストして借り、すぐに読んでしまった。かわいそうで泣けた。あなたが読むのだったら返済期日まで1週間ある。期限までに返してくれればいいと言われまた借りした。
 『太郎が恋をする頃までには・・』という題名で、著者は栗原美和子
 猿回しのはっぴ姿の男性ときれいな女性のウエイディングドレスの写真が表紙を飾っている。女性は、テレビ界で活躍、負けん気と情熱と強運でキャスターの地位まで上りつめた、名の知れたキャリアウーマン。今は系列の新聞社に移って活躍、男性とは取材を通して親しくなり、結婚まで到達したと理解し、読み始めた。
 初めに、手紙文が2通。本の出版に至った動機と迷いのなかで、真実を書いたという安堵感など、本の贈呈にあたっての挨拶状、もう一通は結婚報告の手紙。披露宴は追って行う旨を記す。出版社にいろいろあったことを小説に書いてみないかとすすめられ、迷った末に、夫となった人との約束でもあると決断。この本が書かれた。私小説ではあるが内容は深い。
 初めは、この女性に、自信たっぷりで人を見下した態度に鼻持ちならないものを感じ、良い印象は持てなかった。ところが、猿回しの芸人である、海地ハジメ(太郎)の人間的な面に強くひかれ、相手からも強いアタックもあって、土臭い泥臭い私の好みではない相手との結婚を決意し、届けを出す。 彼は、自分の理解者になって支えて欲しい、そのためには、自分のことを全部知って欲しい、話を聞いて欲しいという。そして衝撃の告白をした。
 自分は被差別部落の出であると話す。子どもの頃のひどい貧困といじめや差別、先祖が受けた人間と見なされない差別。父は、差別と戦うために、努力して町会議員になって活動した。
 ハジメは大学に進んで都会でサラリーマンになって差別と決別したいと思っていたのに、父は、先祖のやっていた猿回しの芸を日本一のものに広めるように強くすすめる。
 部落問題は、いまや存在しないはずなのに、日本中どこでもいまだ巣くっているのだ。ハジメの希望でこのことを、両親に話して欲しいといわれ実家に戻ってまず父に話すと、衝撃を受けたようだが、一応親戚には言わないということで、認めてもらった。が、父を通じて母に話してもらおうとしたが、3人で一緒の時に話すと、母は絶対に認めないという。他の息子や娘、孫がかわいそうだ。そんな親戚ができるのは、親戚だって縁を切るといわれる。どうしても離婚しないなら、親子の縁を切るとまで言い出す。母はその後脳出血で倒れる。自分の責任と感じ看病に長野の実家に通う日が続くうち、ハジメから披露宴延期、この結婚はなかったことにしようといわれる。

 だが、半年後にすべてを明らかにしたこの本が出たということは、この結婚が繋がっていたのだろう。
 太郎が恋をする頃までには、差別のない世の中になっているだろうと、太郎の父親が作った歌だったのだ。

 私の中に差別はないだろうか。こんな世の中に怒りを感じる。しかし、いざとなったら・・。
 高校時代『破戒』を読み、級友に私は差別をしない、と主張したことを思い出す。
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Commented by VIN at 2009-02-10 22:37 x
新聞の広告面に大きく出ていたので関心がありました。
新聞の書評で被差別部落に触れていたのであらすじは知っていましたが、トコさんの日記で明らかになりました。
ぜひ読んでみたいと思います。
私も自分に問います。
高校時代部落問題研究会に所属して世の中の差別に大いに憤慨する熱き心を持っていましたが、現実に息子が連れてきた彼女が・・・と想像するとこの本の彼女の母親の行動に対して批判することができるか、と考えます。
でもどんな差別も大嫌いです。
Commented by ttfuji at 2009-02-11 10:34
VINさん
コメントありがとうございます。人間、他人事には正義感を持ちますが、自分のことになると尻込みする弱さ、卑怯さがありますね。でも、できうる限り温かく、理解者になり、自分の卑怯な面を戒めていきたいと思います。
by ttfuji | 2009-02-10 21:07 | 読書・読書会・図書館 | Comments(2)