2011年 11月 19日
図書館行き・読書メモ |
一昨日(17日)は図書館の返却日。リクエストした『かばん屋の相続』も届いていると連絡を頂いていた。車の都合で午後からTさんと出かけた。帰りにTさんが園芸肥料を買いたいが重いので一人では買えない。寄ってもらえるか、と言うので快諾。スーパーで10キロ近い袋入りを買う。私もついでに食品など買う。
10月から11月にかけて読んだ本の記録がしてない。
いつも同じことの繰り返しだが、題名とかける範囲で寸評など書いておく。
折口信夫集 神の嫁 文豪怪談傑作選 東雅夫編 ちくま文庫
図書館で見つけ、手にとってパラパラとめくると「死者の書」について書かれており、以前に感想を書いたことがあるので、もう一度読んでみようという気になった。漫画(絵解き)で河童や鬼、座敷童の絵も描かれており、折口信夫は、民俗学や怪談ものも書いていたと知る。このシリーズの文豪には泉鏡花、幸田露伴、芥川龍之介、柳田国男、小川未明、その他、それぞれ幽界や物の怪を扱った怪談傑作選が出ている。東雅夫は文芸評論家であり、雑誌『幽』の編集長。
銀行総務特命 池井戸潤 講談社
VINさんの紹介でこの作家を知り、レビューで興味を持ち、数册読んだ。今までミステリーやサスペンスなど色々読んだが、企業小説、銀行小説はあまり読んでないので、とても面白く読んでいる。『下町のロボット』はいまだ順番が回ってこない。
帝都銀行で、不祥事担当の特命を受けている指宿修平が顧客名簿流出、幹部の 裏金づくりからストーカー問題まで、解決していく課程で、自らも窮地に追い込まれる。・・
熊谷キヨ子最後の旅 ねじめ正一 文藝春秋
女優熊谷真実・美由紀の母、キヨ子がモデルの小説。年下のイタリア人青年に恋したり、イタリアまでその青年に会いに行ったり、正義感が強く積極的で明るい魅力的な女性。そのキヨ子が病魔に冒され、足を切断しなければならないという。手術や現代の医療を拒否し、自然療法を求めて静岡、大阪へと旅に出る。姉、佐智子が家族の理解を得てキヨ子に付き添う。前作「熊谷突撃商店」の完結編という。
紅梅 津村節子 文藝春秋
遍路みち 津村節子 講談社
上記2册。「紅梅」は読書会の課題本として、「遍路みち」は図書館で借りて前後して読んだ。
作家、吉村昭の最後を妻の目から綴っている。自身も作家故に締め切りに追われたり、つききりで介護できなかった自責の気持ちが強く、夫は妻の忙しさを理解しているから、出かけていいよ、仕事しなさい、と言っていたが、本心は育子(節子)が常に傍らにいてほしかった。病床で書いた1行日記のようなメモに「目覚めたら育子いない」などと書かれていた。
闘病生活の最後は庭を眺められる自宅に帰ることを望み、育子もその願いを叶えてやりたいと、病院の主治医に掛け合い、自宅療法の体制を整える。敷地内や近隣に住む息子夫婦や娘も介護し支えてくれる。
常に、延命治療は拒否していたが、すでに延命装置に繋がれていた。娘に、もう死ぬ、と言って自ら点滴の管と胸に埋め込まれたカテーテルポートを引き抜いた。育子は、あなたったら!あなたったら!と叫び、看護師は必死でもとに戻そうとしたが、病人とは思えぬ力で払いのけた。妻と娘は「もういいよね」と頷きあった。
妻は「あなたは世界一の作家です」と叫ぶ。あとになってなぜ自分はもっと妻らしい言葉をかけなかったのか、作家の妻をもって夫は幸せではなかったろう、自分は最低の妻だ、と激しく自分を責める。
夫は、自分の発病や病名(舌ガンと膵臓癌)を隠し、誰にも言うな、と言った。それ故、夫の代わりに出席する会議や講演など苦しかった。3年間は自分のことを書いてはいけない、とも言った。育子は、夫の遺言を守った。3ヵ月後にお遍路にで、3年過ぎて、『遍路みち』を書いた。遍路道は、短編5編。育子の眼病のことや、知り合いの看護師さんの生き方のことなど書いているが、あとは、夫とのことだ。
今年、『紅梅』を書いた。紅梅は庭に植えられた吉村昭が好きな花である。愛情に満ちた尊敬し合った夫婦であったと感じた。
五十鈴川の鴨 竹西寛子 幻戯社
読書会で提案された本だが値段が高く、異議の出た本。そこでお借りして読んだ。
装幀も立派で高価なのも頷ける。粗末に扱われたくない著者や出版社の心を感じる。著者は、80才半ばの芸術院会員。文章に気品がある。
短編8編を収録。どれも普通の人を描いているが心に残る穏やかで控えめ人が多い。表題の『五十鈴川の鴨』のあらすじ
私と彼、岸部悠一が知れ合ったのは、都内の企業が催した、同業者向けセミナーだった。何度か接するうちに、無口ながらしっかりしたものや実力を持っていることが伺われ、魅力を感じる。セミナーの終わった夜など、食事に誘いお酒を傾ける。しかし、私生活のことは何も触れず、聞くと、話題を変える。出過ぎたことを聞いたと私も無理には聞かない。四日市のセミナーの折、終了日の翌日は休日と言うこともあり。彼を伊勢神宮に誘った。五十鈴川の岸辺の茶店で休んでいるとき、親子連れの鴨が泳いでやってくるのを眺め、彼は「いいなあ」とつぶやく。
それから、何年かして、勤務先に未知の女性から電話を受ける。香田と名乗り岸部さんと一時、同じ会社に勤めていたものでございますという。岸部さんから託かっていることがあるので、お会いさせて頂きたい、お手間は取らせませんという。翌日?受付から
訪問者がいらっしゃると連絡が入り、応接室へ行くと、香田は、岸部が亡くなったことを伝え、「六月十九日は良い日でした。ありがとう」という言葉を私に伝えてほしいと頼んだという。六月十九日は、伊勢神宮へ行った日だった。
香田の話によると、岸部と香田は親しくなったが、結婚については、許してほしい、と避けたという。時々体調を崩して入院もした。原因は、広島での被爆だった。後遺症に苦しんでいた。彼の一家は全員なくなったという。哀しい話だった。
酔生夢死か起死回生か 阿川弘之・北杜夫 対談集 新潮社
思わずクスリと笑ってしまう、対談。北杜夫は躁鬱病も持ち主で、9割は鬱だという。
気力がない、生きているのも辛いから早く死にたい、と常に言っている。対談の途中でも、それを言う。本心だろう。阿川弘之は遠藤周作や三浦朱門達と同様北杜夫とも旧友である。辛口で有名だが親友でもあり、お互い遠慮はない。北のことをマンボウと言っている。父親の斎藤茂吉を柿本人麻呂以来の名歌人と尊敬している。万葉調の茂吉の短歌を幾つも(殆ど)暗唱している様子だ。2人で(時に家族も)外国旅行や世界の船旅もあちこち一緒に行っている。自ら躁鬱病と公言しているので、患者にこの病名を告げても、大きなショックを与えなくなったのも北杜夫の功績と言われるそうだ。
枕元で読むには考え事もなく読めて楽しい。
武士道 新渡戸稲造 奈良本辰也 訳解説
(人に勝ち自分に克つ強靱な精神力を鍛える)三笠書房 知的生き方文庫
藤原正彦著の『武士道』を以前読んだが最後まで読まなかった。図書館でこの本を見つけ、違いはあるかと読んでみると、とても分かりやすく、読みやすい訳本になっている。(原著は英文)
サイラス・マーナー ジョウジ・エリオット
フロス河の水車場 〃
上記2册、VINさんのレビューで、是非読んでみたいと思い、図書館の書庫から探してもらったが、全集からものや、文庫のものも、文字が細く小さく、読み進めず、あきらめた。外国文学が好きだった若い頃なら読めたと思うが、安直な本ばかり読んでいる私には荷が重かった。
10月から11月にかけて読んだ本の記録がしてない。
いつも同じことの繰り返しだが、題名とかける範囲で寸評など書いておく。
折口信夫集 神の嫁 文豪怪談傑作選 東雅夫編 ちくま文庫
図書館で見つけ、手にとってパラパラとめくると「死者の書」について書かれており、以前に感想を書いたことがあるので、もう一度読んでみようという気になった。漫画(絵解き)で河童や鬼、座敷童の絵も描かれており、折口信夫は、民俗学や怪談ものも書いていたと知る。このシリーズの文豪には泉鏡花、幸田露伴、芥川龍之介、柳田国男、小川未明、その他、それぞれ幽界や物の怪を扱った怪談傑作選が出ている。東雅夫は文芸評論家であり、雑誌『幽』の編集長。
銀行総務特命 池井戸潤 講談社
VINさんの紹介でこの作家を知り、レビューで興味を持ち、数册読んだ。今までミステリーやサスペンスなど色々読んだが、企業小説、銀行小説はあまり読んでないので、とても面白く読んでいる。『下町のロボット』はいまだ順番が回ってこない。
帝都銀行で、不祥事担当の特命を受けている指宿修平が顧客名簿流出、幹部の 裏金づくりからストーカー問題まで、解決していく課程で、自らも窮地に追い込まれる。・・
熊谷キヨ子最後の旅 ねじめ正一 文藝春秋
女優熊谷真実・美由紀の母、キヨ子がモデルの小説。年下のイタリア人青年に恋したり、イタリアまでその青年に会いに行ったり、正義感が強く積極的で明るい魅力的な女性。そのキヨ子が病魔に冒され、足を切断しなければならないという。手術や現代の医療を拒否し、自然療法を求めて静岡、大阪へと旅に出る。姉、佐智子が家族の理解を得てキヨ子に付き添う。前作「熊谷突撃商店」の完結編という。
紅梅 津村節子 文藝春秋
遍路みち 津村節子 講談社
上記2册。「紅梅」は読書会の課題本として、「遍路みち」は図書館で借りて前後して読んだ。
作家、吉村昭の最後を妻の目から綴っている。自身も作家故に締め切りに追われたり、つききりで介護できなかった自責の気持ちが強く、夫は妻の忙しさを理解しているから、出かけていいよ、仕事しなさい、と言っていたが、本心は育子(節子)が常に傍らにいてほしかった。病床で書いた1行日記のようなメモに「目覚めたら育子いない」などと書かれていた。
闘病生活の最後は庭を眺められる自宅に帰ることを望み、育子もその願いを叶えてやりたいと、病院の主治医に掛け合い、自宅療法の体制を整える。敷地内や近隣に住む息子夫婦や娘も介護し支えてくれる。
常に、延命治療は拒否していたが、すでに延命装置に繋がれていた。娘に、もう死ぬ、と言って自ら点滴の管と胸に埋め込まれたカテーテルポートを引き抜いた。育子は、あなたったら!あなたったら!と叫び、看護師は必死でもとに戻そうとしたが、病人とは思えぬ力で払いのけた。妻と娘は「もういいよね」と頷きあった。
妻は「あなたは世界一の作家です」と叫ぶ。あとになってなぜ自分はもっと妻らしい言葉をかけなかったのか、作家の妻をもって夫は幸せではなかったろう、自分は最低の妻だ、と激しく自分を責める。
夫は、自分の発病や病名(舌ガンと膵臓癌)を隠し、誰にも言うな、と言った。それ故、夫の代わりに出席する会議や講演など苦しかった。3年間は自分のことを書いてはいけない、とも言った。育子は、夫の遺言を守った。3ヵ月後にお遍路にで、3年過ぎて、『遍路みち』を書いた。遍路道は、短編5編。育子の眼病のことや、知り合いの看護師さんの生き方のことなど書いているが、あとは、夫とのことだ。
今年、『紅梅』を書いた。紅梅は庭に植えられた吉村昭が好きな花である。愛情に満ちた尊敬し合った夫婦であったと感じた。
五十鈴川の鴨 竹西寛子 幻戯社
読書会で提案された本だが値段が高く、異議の出た本。そこでお借りして読んだ。
装幀も立派で高価なのも頷ける。粗末に扱われたくない著者や出版社の心を感じる。著者は、80才半ばの芸術院会員。文章に気品がある。
短編8編を収録。どれも普通の人を描いているが心に残る穏やかで控えめ人が多い。表題の『五十鈴川の鴨』のあらすじ
私と彼、岸部悠一が知れ合ったのは、都内の企業が催した、同業者向けセミナーだった。何度か接するうちに、無口ながらしっかりしたものや実力を持っていることが伺われ、魅力を感じる。セミナーの終わった夜など、食事に誘いお酒を傾ける。しかし、私生活のことは何も触れず、聞くと、話題を変える。出過ぎたことを聞いたと私も無理には聞かない。四日市のセミナーの折、終了日の翌日は休日と言うこともあり。彼を伊勢神宮に誘った。五十鈴川の岸辺の茶店で休んでいるとき、親子連れの鴨が泳いでやってくるのを眺め、彼は「いいなあ」とつぶやく。
それから、何年かして、勤務先に未知の女性から電話を受ける。香田と名乗り岸部さんと一時、同じ会社に勤めていたものでございますという。岸部さんから託かっていることがあるので、お会いさせて頂きたい、お手間は取らせませんという。翌日?受付から
訪問者がいらっしゃると連絡が入り、応接室へ行くと、香田は、岸部が亡くなったことを伝え、「六月十九日は良い日でした。ありがとう」という言葉を私に伝えてほしいと頼んだという。六月十九日は、伊勢神宮へ行った日だった。
香田の話によると、岸部と香田は親しくなったが、結婚については、許してほしい、と避けたという。時々体調を崩して入院もした。原因は、広島での被爆だった。後遺症に苦しんでいた。彼の一家は全員なくなったという。哀しい話だった。
酔生夢死か起死回生か 阿川弘之・北杜夫 対談集 新潮社
思わずクスリと笑ってしまう、対談。北杜夫は躁鬱病も持ち主で、9割は鬱だという。
気力がない、生きているのも辛いから早く死にたい、と常に言っている。対談の途中でも、それを言う。本心だろう。阿川弘之は遠藤周作や三浦朱門達と同様北杜夫とも旧友である。辛口で有名だが親友でもあり、お互い遠慮はない。北のことをマンボウと言っている。父親の斎藤茂吉を柿本人麻呂以来の名歌人と尊敬している。万葉調の茂吉の短歌を幾つも(殆ど)暗唱している様子だ。2人で(時に家族も)外国旅行や世界の船旅もあちこち一緒に行っている。自ら躁鬱病と公言しているので、患者にこの病名を告げても、大きなショックを与えなくなったのも北杜夫の功績と言われるそうだ。
枕元で読むには考え事もなく読めて楽しい。
武士道 新渡戸稲造 奈良本辰也 訳解説
(人に勝ち自分に克つ強靱な精神力を鍛える)三笠書房 知的生き方文庫
藤原正彦著の『武士道』を以前読んだが最後まで読まなかった。図書館でこの本を見つけ、違いはあるかと読んでみると、とても分かりやすく、読みやすい訳本になっている。(原著は英文)
サイラス・マーナー ジョウジ・エリオット
フロス河の水車場 〃
上記2册、VINさんのレビューで、是非読んでみたいと思い、図書館の書庫から探してもらったが、全集からものや、文庫のものも、文字が細く小さく、読み進めず、あきらめた。外国文学が好きだった若い頃なら読めたと思うが、安直な本ばかり読んでいる私には荷が重かった。
by ttfuji
| 2011-11-19 14:39
| 読書