2006年 03月 17日
読書 「冬の標」 ・ 「明日への伝言」 ほか |
冬の標 乙川優三郎 中央公論新社
著者の作品は「霧の橋」「喜知次」に次いで3作目。
幕末の混乱期。藩の上士の娘で、絵を描くことに生き甲斐を見いだした娘、明世は父親を説得し13歳で画塾“有休舎”に通い始める。画塾には、貧しい藩士の次男坊や町人、蒔絵師の跡取りなどがいた。師匠、葦秋は清貧に生きる人で、厳しく温かく、差別なく指導する。明世がますます絵にのめり込むのを両親は心配し、身分の釣り合いのいい縁談先の一人息子に嫁がされる。どうしても絵をやりたいのなら、婚家の許可を得てやれ、と父にいわれるが、許されるはずもない。幕末の戦乱の中、派兵で夫も早世、舅も命を縮める。あとは、明世、過去ばかり見る姑、幼い息子が残され、禄高も減らされ、いっぺんに貧しい生活になる。そんな中でも、絵への情熱は、消えず台所で、少しずつ描きためた絵を持って「有休舎」を訪れる。・・略。画塾の弟子同士で、絵への情熱や夢を持ち、理解し合える男性との再会もあるが、戦死によって幸せにはなれなかった。
最後は、明世が姑を看取り、一人息子の成長を見届け、画家としての自立のために江戸へ立つ。まだ30代後半。そこで終わる。余韻は残るが、その後の生き方も、もう少し示唆するものが欲しかった。
明日への伝言 河上澄子 文芸社
これは、読書会の友人から、読んで欲しいといわれ、買った本。著者は、長崎原爆被爆者である。長崎高等女学校から動員されて軍需工場で働いていた。そこで被爆。17歳の誕生日の前日だった。そのあとの地獄のような惨状は、多くの本や写真展で伝えられていることと変わりない。河上さんも、全身やけど、皮膚はべろべろ、上腕は骨まで出ていたという。助かったのが奇跡としか思えない状態だった。意志の強さと生命力、何ものかの力で、生きられたのだろう。しかも、結婚もし、二人の娘にも恵まれている。原爆後遺症に苦しみながらも忙しく働き、いくつもの癌と闘いながら、ある時から、自分の体験を人々に伝え、世界から核兵器をなくそうという運動や講演をするようになる。河上さんは伊勢原に住む長女と暮らし、東海大学の医療を受けながら、活動した。
平成16年、闘病を続けながら76歳で亡くなられた。
秋田殺人事件 内田康夫 光文社
内田康夫ファンの友人から借りて読む。ミステリーだが、国や社会の構造や裏側を暴く、歴史にも詳しく、勉強にもなるので、魅力を感じる。この本は、秋田杉美林センターの偽装建築事件と県や警察を巻き込んだ贈収賄事件を描く。面白く読んだ。
著者の作品は「霧の橋」「喜知次」に次いで3作目。
幕末の混乱期。藩の上士の娘で、絵を描くことに生き甲斐を見いだした娘、明世は父親を説得し13歳で画塾“有休舎”に通い始める。画塾には、貧しい藩士の次男坊や町人、蒔絵師の跡取りなどがいた。師匠、葦秋は清貧に生きる人で、厳しく温かく、差別なく指導する。明世がますます絵にのめり込むのを両親は心配し、身分の釣り合いのいい縁談先の一人息子に嫁がされる。どうしても絵をやりたいのなら、婚家の許可を得てやれ、と父にいわれるが、許されるはずもない。幕末の戦乱の中、派兵で夫も早世、舅も命を縮める。あとは、明世、過去ばかり見る姑、幼い息子が残され、禄高も減らされ、いっぺんに貧しい生活になる。そんな中でも、絵への情熱は、消えず台所で、少しずつ描きためた絵を持って「有休舎」を訪れる。・・略。画塾の弟子同士で、絵への情熱や夢を持ち、理解し合える男性との再会もあるが、戦死によって幸せにはなれなかった。
最後は、明世が姑を看取り、一人息子の成長を見届け、画家としての自立のために江戸へ立つ。まだ30代後半。そこで終わる。余韻は残るが、その後の生き方も、もう少し示唆するものが欲しかった。
明日への伝言 河上澄子 文芸社
これは、読書会の友人から、読んで欲しいといわれ、買った本。著者は、長崎原爆被爆者である。長崎高等女学校から動員されて軍需工場で働いていた。そこで被爆。17歳の誕生日の前日だった。そのあとの地獄のような惨状は、多くの本や写真展で伝えられていることと変わりない。河上さんも、全身やけど、皮膚はべろべろ、上腕は骨まで出ていたという。助かったのが奇跡としか思えない状態だった。意志の強さと生命力、何ものかの力で、生きられたのだろう。しかも、結婚もし、二人の娘にも恵まれている。原爆後遺症に苦しみながらも忙しく働き、いくつもの癌と闘いながら、ある時から、自分の体験を人々に伝え、世界から核兵器をなくそうという運動や講演をするようになる。河上さんは伊勢原に住む長女と暮らし、東海大学の医療を受けながら、活動した。
平成16年、闘病を続けながら76歳で亡くなられた。
秋田殺人事件 内田康夫 光文社
内田康夫ファンの友人から借りて読む。ミステリーだが、国や社会の構造や裏側を暴く、歴史にも詳しく、勉強にもなるので、魅力を感じる。この本は、秋田杉美林センターの偽装建築事件と県や警察を巻き込んだ贈収賄事件を描く。面白く読んだ。
by ttfuji
| 2006-03-17 18:45
| 読書