2006年 11月 23日
大江健三郎さんのこと ① 本 |
意外という顔をされるが、隠れた大江さんのファンである。若い頃は敬遠していた。ある時期から親しみを感じるようになった。それには、長男の光さんの存在が大きいように思う。誤解を恐れず、失礼なことを言うと、大江さんの人間としての成長にも、光さんの存在があると思う。同年なので、初期の作品も読んだが、殆ど難解で読み通せなかった。それからは、私の読書の範疇には入らない作家として敬遠していた。ノーベル文化賞を授与され、読んでみようという気になった。テレビでのインタビューやドキュメンタリーで、光さんのことを知り、生まれつきの障害を持ちながらも、音楽の才能を持ち、心に響く作曲をすることに感動した。光さんを中心に、家族が支え合っている様子も、家庭人としての大江さんにも親しみ、敬服の念を持った。フィクションとはいえ、「静かな生活」は大江家の様子を伝えているし、奥さんのゆかりさんが挿絵を描いている「ゆるやかな絆」「恢復する家族」「自分の木下で」は素晴らしいエッセーで手元に保存している。「二百年の子供」は過去と未来、時空を超えて出会う子供の友情、何とも不思議な物語。「取り替え子(チェンジリング)」は、親友であり、妻の兄である伊丹十三氏とのこと、松山高校時代からの交友、自分の祖父母、父母のことも、生き生きと描かれている。父の政治結社?の運動から来る、地元の冷たい目。いまだに狙われる身辺の危害。複数の本から読みとれる真実の姿にフィクションではない、大江さんの苦悩を感じる。他に「憂い顔の童子」「万延元年のフットボール」「新しい人よ目ざめよ」「雨の木」シリーズ。思い出せないがあと2・3冊は読んでいるはずだ。朝日新聞に連載された、世界の著名人との往復書簡。今は定義集というのが掲載されている。VINさんがアップされた「宙返り」も読みたいと思う。
by ttfuji
| 2006-11-23 21:37
| 読書