2007年 07月 12日
読書3冊 |
このところ読む本が、なぜか摩訶不思議なものばかりだ。選んで読んでいるわけではないが手に取ってみると、その類が多い。
蒼穹の昴 上 浅田次郎
清朝末期の中国。乾隆帝や康煕帝、光緒帝、西太后、愛親覚羅、袁世凱などというなじみのある名が多く出てくる。科挙制度、宦官などが支配していた時代だ。
ある占い師(占星師)によって、将来は国中の財を手に入れると言われた、馬糞拾いの少年、春児は、その予言に支配されて、宦官になることを決意する。この時代何万という宦官が生み出され、多くが施術と苦痛の末に死んでいく。宦官は消耗品だった。この少年は、場末の演劇集団の指導者に見いだされ芸や武術を徹底的に教え込まれ演劇者として西太后の目にとまる。
残虐非道の女帝として知られる西太后だが、ここでは、無能な皇太子などに皇帝を託せないという、側面の事情が描かれ理解できる。下巻はまだ図書館から連絡が来てない。
道長の冒険 平岩弓枝
これも荒唐無稽な冒険小説。返却棚から何気なく手にした本。まるで西遊記の世界だ。
平安の京に春が来ない。ものみな凍り付き、楽士の麻比呂はどこかに連れ去られたまま帰ってこない。虎猫の化身寅麿が、真比呂が根の国に連れ去られたことを知らせてくる。道長は寅麿を従えて救出に赴く。物の怪や魔物に姿を変えさせられた人々を救いながら神の力も借りて麻比呂を助け出し、都に帰る。凍り付いていた人たちは眠りから覚めたように動き出す。痛快冒険小説といったものだが、道長はこんなに清廉潔白、勇気ある人だったのだろうか。
鍋の中 村田喜代子
随分古い本だが読んでいなかった。昭和62年の芥川賞受賞作。
「鍋の中」を含む4篇「水中の声」「熱愛」「盟友」が収録されている。
「鍋の中」は、10代の少年少女4人のいとこが田舎の祖母の家で過ごす夏休みを描いている。17歳の少女たみ子の目から書かれる。祖母は80歳。小さな畑でいろいろの野菜を少しづつ作っている。いとこたちがここに集ったのは、60年前ハワイに渡った祖母の弟の息子クラークさんから手紙が届いたのが発端。父が病の床にあるが、日本のきょうだいに会いたがっている、と。パイナップル農園で大金持ちになったらしい弟の家から連絡があったことで祖母の子どもたち、いとこたちの親は大喜びでハワイへ向かい、残された4人の孫が祖母の家に預けられることとなった。
おばあさんには13人のきょうだいがいた。孫たちは祖母に名前を聞いて書き出すが、その中にハワイへ行った弟の名前がない。自分たちも来年はハワイへ行きたいという孫達に祖母はショックを受けたように元気がない。
どうしてそんなに冷たいのかと問いただす孫に、おばあさんは、この弟に記憶が全くないという。孫達は記憶をひもとこうとあれこれ尋ねる。おばあさんが、記憶を頼りにボツボツ語るうちに、2人の孫の出生に拘わる秘密も語られることになる。
いろいろのものが入って煮くずれた鍋の中はおばあさんの頭の中の状態かもしれない。
私はこの小説をとても面白く読んだ。昔の風景、昔の大家族の様子が良く書かれている。
この作者のものは、「蕨野行」「人が見たら蛙になれ」(新聞掲載)しか読んでいないが、独特の雰囲気がある。
蒼穹の昴 上 浅田次郎
清朝末期の中国。乾隆帝や康煕帝、光緒帝、西太后、愛親覚羅、袁世凱などというなじみのある名が多く出てくる。科挙制度、宦官などが支配していた時代だ。
ある占い師(占星師)によって、将来は国中の財を手に入れると言われた、馬糞拾いの少年、春児は、その予言に支配されて、宦官になることを決意する。この時代何万という宦官が生み出され、多くが施術と苦痛の末に死んでいく。宦官は消耗品だった。この少年は、場末の演劇集団の指導者に見いだされ芸や武術を徹底的に教え込まれ演劇者として西太后の目にとまる。
残虐非道の女帝として知られる西太后だが、ここでは、無能な皇太子などに皇帝を託せないという、側面の事情が描かれ理解できる。下巻はまだ図書館から連絡が来てない。
道長の冒険 平岩弓枝
これも荒唐無稽な冒険小説。返却棚から何気なく手にした本。まるで西遊記の世界だ。
平安の京に春が来ない。ものみな凍り付き、楽士の麻比呂はどこかに連れ去られたまま帰ってこない。虎猫の化身寅麿が、真比呂が根の国に連れ去られたことを知らせてくる。道長は寅麿を従えて救出に赴く。物の怪や魔物に姿を変えさせられた人々を救いながら神の力も借りて麻比呂を助け出し、都に帰る。凍り付いていた人たちは眠りから覚めたように動き出す。痛快冒険小説といったものだが、道長はこんなに清廉潔白、勇気ある人だったのだろうか。
鍋の中 村田喜代子
随分古い本だが読んでいなかった。昭和62年の芥川賞受賞作。
「鍋の中」を含む4篇「水中の声」「熱愛」「盟友」が収録されている。
「鍋の中」は、10代の少年少女4人のいとこが田舎の祖母の家で過ごす夏休みを描いている。17歳の少女たみ子の目から書かれる。祖母は80歳。小さな畑でいろいろの野菜を少しづつ作っている。いとこたちがここに集ったのは、60年前ハワイに渡った祖母の弟の息子クラークさんから手紙が届いたのが発端。父が病の床にあるが、日本のきょうだいに会いたがっている、と。パイナップル農園で大金持ちになったらしい弟の家から連絡があったことで祖母の子どもたち、いとこたちの親は大喜びでハワイへ向かい、残された4人の孫が祖母の家に預けられることとなった。
おばあさんには13人のきょうだいがいた。孫たちは祖母に名前を聞いて書き出すが、その中にハワイへ行った弟の名前がない。自分たちも来年はハワイへ行きたいという孫達に祖母はショックを受けたように元気がない。
どうしてそんなに冷たいのかと問いただす孫に、おばあさんは、この弟に記憶が全くないという。孫達は記憶をひもとこうとあれこれ尋ねる。おばあさんが、記憶を頼りにボツボツ語るうちに、2人の孫の出生に拘わる秘密も語られることになる。
いろいろのものが入って煮くずれた鍋の中はおばあさんの頭の中の状態かもしれない。
私はこの小説をとても面白く読んだ。昔の風景、昔の大家族の様子が良く書かれている。
この作者のものは、「蕨野行」「人が見たら蛙になれ」(新聞掲載)しか読んでいないが、独特の雰囲気がある。
by ttfuji
| 2007-07-12 13:30
| 読書