2009年 04月 21日
4月の読書 |
読書録を書かなければと思いながら、億劫なものがあって一日一日と遅らせていた。いつももうやめようと思いつつ、題名だけでもと書いてしまう。従って、人様に見て頂けるようなものは書けない。今回は、特に推薦したい本も少なかったし。
今、松井計さんの「ホームレス作家」を読んでおり、それが読み終わったらまとめて書こうと思っていた。
ところが、昨日、太極拳に行った折、i&iさんこと、いつ子さんより、素晴らしい本だからと多田富雄氏の「寡黙なる巨人」をすすめられお借りしてきた。夜になってその本を読み始めたが、あまりの闘病生活の凄さに衝撃を受け目が離せなくなってしまった。この2冊はあとに譲るとして、読み終わったものだけ記録します。
「妖恋」 日本民話抄 北原亜以子 集英社
妖しげな題名に惹かれて図書館より借りてきた。『雪女』と『道成寺』の2篇。現代版『雪女』と『道成寺』である。原作は女の情念と執念の怖さを男が感じる物語だが。
「雪女」
親に内緒で大学を中退したヒロシは、コペンハーゲンの人魚姫の像に会いに行く。そこで出会ったヒロシとレイコは即座に意気投合する。デンマークのロスキレにすみたいというレイコに、そのために日本へ帰って現金輸送車襲撃を決行。うまくいったが、ほとぼりが冷めるまで富山の山奥の温泉地で暮らすことにするが、二人の間に気持の変化が生じ・・・
「道成寺」
上野で、『道成寺』の能を見る場面から始まる。学生時代の友人の招待である。友人は、夫の甥で大学生の真哉を晶子に紹介する。その真哉に恋をしてしまった36歳の晶子。
だんだん離れて行く真哉に会いたい一心で大学の門前で待ち伏せし、仕事場の出入り口で待ち伏せし・・・。
余り、気持ちのいい小説ではなかった。
『折口信夫』 筑摩書房
折口信夫の作品と経歴、業績などが書かれている本。短歌、評論、小説、『死者の書』『毒身丸』その他、そのまま載っている。短歌と「死者の書」は思わず再読してしまった。愛弟子から養子にした、藤井氏のことも、戦死され落胆のあまり気力を失ったことも。
「とんぼ」 伊集院静 講談社
7編の短編小説集。冬の蜻蛉・睡蓮の雨・チルドレン・うそ時計・ウイリアムテル・あぶな絵・秋野など。帯にはリリカルに哀しく、7つの愛のストーリーとあり、解説には哀しくて、でも生きる勇気はわいてくる、七つの愛の物語。短編小説の名手が繰り出す珠玉の作品集とあるが、私は、一応通読したが、どれにも特別な感動を覚えなかった。好みの作家ではないような気がする。
母 円地文子 冨家素子 新潮社
円地文子の作品は1冊も読んでいない。先入観で好みの作家ではないと決めていた。たまたま、この本を図書館の返却棚から手に取り、読む気になった。娘が書く円地文子とはどんな人なのかと。
著者は一人娘故、両親の愛情を独り占めし、のびのびというか、自由奔放に育って、歯に衣着せぬ調子で、両親のこと、身内のことを書いている。自由奔放さは、母も同じで、また父も同じく押しの強い新聞記者上がりのお役人だが、不仲の母とも離婚はしなかった。以下、抜粋する。
母は、いつも離婚しなかったのはあなたのせいよ、と娘に未練がましく言っていたという。「母の終焉」から始まり81歳の母を看とったときのこと、「母の結婚」では、母は夫婦仲が悪く、結婚してからずーっと父と離婚したいと思っていたと言うが、父は自分たちは世間が言うほど夫婦仲が悪かったとは思っていなかっただろう。第一、父は母がどんなに足掻こうと、離婚する意志など生涯持たなかったのだから。それならばと開き直って父のことを悪し様に書くことでうっぷんを晴らしていた・・、いつもは母らしき人物は善人で、我々父娘は悪人もしくは嫌な奴に書かれている。何でこれ程、私と父が悪く書かれるのか、心外だし迷惑な話である。
母の父、上田万年は東京帝国大学の文学部教授のボスで、日本の比較言語学の始祖といわれた人である。父との縁談を持ってきた人は、当時帝大新聞研究所の所長をしていた。その頃、父は東京日々新聞の記者で、ベルリンの特派員をしていた。折からドイツの飛行船ツェッペリンに同乗し日本に帰国、花形記者として世間を騒がせていた。母も目立つことが嫌いな方ではないし、父に興味を持ったのだろう・・、とこんな調子で父母のこと、一族のことを赤裸々に書いている。あとがきに母は、御伽草子に「鉢かつぎ姫」というのがあるが、母は鉢のような存在だったような気がする。今鉢がとれて、頭が軽くなったような気がしないでもないと書いている。ミーハー的だが面白く読んだ。
雪の花 吉村昭 新潮文庫
VINさんのアップで読んだ本。天然痘が恐ろしい伝染力でまん延し、種痘がない江戸時代以前、多くの人びとがバタバタと死んでゆく、助かっても二目と見られない後遺症のあばたを残す。毎年のように死体を運ぶ荷車を見ている、町医者笠原良策は、どうしたらこれを助けることができるかと思い悩む。蘭学の医学で牛痘苗を植え付けることによって、疱瘡に罹らなくなるということが伝わってくる。それを手に入れるために、万難を排し、わが身を捧げてもと雪の峠を越える。、種を繋ぐための子供連れの旅が始まる。 詳しくはVINさんのブログでお読み下さい。
http://yaplog.jp/ashy_ashy/category_4/
種痘といえば 緒方洪庵の功績が知られているがそれ以前も、こうしたことに命をかけた人はいたのである。
宮部みゆきの江戸レシピ
宮部みゆきの時代小説の中に出てくる料理を、料理人であり食生活史研究家である福田浩さんが再現、写真家の小沢忠恭さんが撮影している。なじみの料理で見て楽しめる
今、松井計さんの「ホームレス作家」を読んでおり、それが読み終わったらまとめて書こうと思っていた。
ところが、昨日、太極拳に行った折、i&iさんこと、いつ子さんより、素晴らしい本だからと多田富雄氏の「寡黙なる巨人」をすすめられお借りしてきた。夜になってその本を読み始めたが、あまりの闘病生活の凄さに衝撃を受け目が離せなくなってしまった。この2冊はあとに譲るとして、読み終わったものだけ記録します。
「妖恋」 日本民話抄 北原亜以子 集英社
妖しげな題名に惹かれて図書館より借りてきた。『雪女』と『道成寺』の2篇。現代版『雪女』と『道成寺』である。原作は女の情念と執念の怖さを男が感じる物語だが。
「雪女」
親に内緒で大学を中退したヒロシは、コペンハーゲンの人魚姫の像に会いに行く。そこで出会ったヒロシとレイコは即座に意気投合する。デンマークのロスキレにすみたいというレイコに、そのために日本へ帰って現金輸送車襲撃を決行。うまくいったが、ほとぼりが冷めるまで富山の山奥の温泉地で暮らすことにするが、二人の間に気持の変化が生じ・・・
「道成寺」
上野で、『道成寺』の能を見る場面から始まる。学生時代の友人の招待である。友人は、夫の甥で大学生の真哉を晶子に紹介する。その真哉に恋をしてしまった36歳の晶子。
だんだん離れて行く真哉に会いたい一心で大学の門前で待ち伏せし、仕事場の出入り口で待ち伏せし・・・。
余り、気持ちのいい小説ではなかった。
『折口信夫』 筑摩書房
折口信夫の作品と経歴、業績などが書かれている本。短歌、評論、小説、『死者の書』『毒身丸』その他、そのまま載っている。短歌と「死者の書」は思わず再読してしまった。愛弟子から養子にした、藤井氏のことも、戦死され落胆のあまり気力を失ったことも。
「とんぼ」 伊集院静 講談社
7編の短編小説集。冬の蜻蛉・睡蓮の雨・チルドレン・うそ時計・ウイリアムテル・あぶな絵・秋野など。帯にはリリカルに哀しく、7つの愛のストーリーとあり、解説には哀しくて、でも生きる勇気はわいてくる、七つの愛の物語。短編小説の名手が繰り出す珠玉の作品集とあるが、私は、一応通読したが、どれにも特別な感動を覚えなかった。好みの作家ではないような気がする。
母 円地文子 冨家素子 新潮社
円地文子の作品は1冊も読んでいない。先入観で好みの作家ではないと決めていた。たまたま、この本を図書館の返却棚から手に取り、読む気になった。娘が書く円地文子とはどんな人なのかと。
著者は一人娘故、両親の愛情を独り占めし、のびのびというか、自由奔放に育って、歯に衣着せぬ調子で、両親のこと、身内のことを書いている。自由奔放さは、母も同じで、また父も同じく押しの強い新聞記者上がりのお役人だが、不仲の母とも離婚はしなかった。以下、抜粋する。
母は、いつも離婚しなかったのはあなたのせいよ、と娘に未練がましく言っていたという。「母の終焉」から始まり81歳の母を看とったときのこと、「母の結婚」では、母は夫婦仲が悪く、結婚してからずーっと父と離婚したいと思っていたと言うが、父は自分たちは世間が言うほど夫婦仲が悪かったとは思っていなかっただろう。第一、父は母がどんなに足掻こうと、離婚する意志など生涯持たなかったのだから。それならばと開き直って父のことを悪し様に書くことでうっぷんを晴らしていた・・、いつもは母らしき人物は善人で、我々父娘は悪人もしくは嫌な奴に書かれている。何でこれ程、私と父が悪く書かれるのか、心外だし迷惑な話である。
母の父、上田万年は東京帝国大学の文学部教授のボスで、日本の比較言語学の始祖といわれた人である。父との縁談を持ってきた人は、当時帝大新聞研究所の所長をしていた。その頃、父は東京日々新聞の記者で、ベルリンの特派員をしていた。折からドイツの飛行船ツェッペリンに同乗し日本に帰国、花形記者として世間を騒がせていた。母も目立つことが嫌いな方ではないし、父に興味を持ったのだろう・・、とこんな調子で父母のこと、一族のことを赤裸々に書いている。あとがきに母は、御伽草子に「鉢かつぎ姫」というのがあるが、母は鉢のような存在だったような気がする。今鉢がとれて、頭が軽くなったような気がしないでもないと書いている。ミーハー的だが面白く読んだ。
雪の花 吉村昭 新潮文庫
VINさんのアップで読んだ本。天然痘が恐ろしい伝染力でまん延し、種痘がない江戸時代以前、多くの人びとがバタバタと死んでゆく、助かっても二目と見られない後遺症のあばたを残す。毎年のように死体を運ぶ荷車を見ている、町医者笠原良策は、どうしたらこれを助けることができるかと思い悩む。蘭学の医学で牛痘苗を植え付けることによって、疱瘡に罹らなくなるということが伝わってくる。それを手に入れるために、万難を排し、わが身を捧げてもと雪の峠を越える。、種を繋ぐための子供連れの旅が始まる。 詳しくはVINさんのブログでお読み下さい。
http://yaplog.jp/ashy_ashy/category_4/
種痘といえば 緒方洪庵の功績が知られているがそれ以前も、こうしたことに命をかけた人はいたのである。
宮部みゆきの江戸レシピ
宮部みゆきの時代小説の中に出てくる料理を、料理人であり食生活史研究家である福田浩さんが再現、写真家の小沢忠恭さんが撮影している。なじみの料理で見て楽しめる
by ttfuji
| 2009-04-21 15:39
| 読書